Droving

家畜追い

　家畜の群れを追って、新たな牧場や市場へと長距離移動をすること。

　1830年代後半、ポートフィリップやサウスオーストラリアで新たな牧場が開拓されると、ニューサウスウェールズから多くの家畜追いがやってきた。また、北部オーストラリアの牧場は19世紀後半に開拓され、その際にデュラックス社やシドニー・キッドマンSidney Kidmanの牧場が有名になった。しかし、20世紀には鉄道や車を用いて家畜を輸送する方法が主流となり、家畜追いは衰退した。

　家畜追いの仕事は男性の仕事であり、鞍に跨って長時間を過ごしたり、長い間家族と離れ離れになったりするような孤独な仕事であった。しかしながら、家畜追いたちはその仕事を楽しんでいた。彼らの仕事ぶりを描いた詩やバラッド、フォークソング、文学作品は数多く、その中でもヘンリー・ローソンHenry Lawsonによる『家畜追いの妻』The Drover’s Wifeなどは特に著名である。

　その一方で、アボリジナルの人々が家畜追いをしていたという事実は、近年まで長い間注目を浴びることはなかった。

　齊藤丈晃1512