オーストラリア辞典
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Economic History

経済史学



 近年のオーストラリア経済史学は、N.G.バトリンによって発展したといえる。バトリンは1962年に発表した著作『オーストラリア経済発展への投資1861-1900で、19世紀半ばのオーストラリア経済史学についての研究を発表し、一躍有名になった。それまでは、オーストラリア経済史学においてはE.O.G.シャンやマルクス主義者のブライアン・フィッツパトリックといった経済史家の説が有力であったが、バトリンの説はそれらに取って代わった。バトリンの示した新たな説は、統計学者T.A.コグランの影響を受けていた。バトリンはコグランの研究を参考にして、歴史学に計量的手法や経済学の理論を導入した。

 そしてバトリンは、1850年代以降の経済における第2・3次産業の急速な成長や、政府の役割、あるいは都市の経済活動に注目した。この中でも特に、都市の経済活動に関する研究は議論を呼び、C.B.シェドヴィンとJ.W.マカーティ、E.A.ディングル、D.T.メレット、ライオネル・フロストといった経済史学者たちがこの研究について言及した著作を発表した。このほかバトリンは、オーストラリア国立大学で行われた研究プロジェクトにも参加し、1900年以降の経済発展で政府が果たした役割を研究した。

 オーストラリアでは、バトリンの他にも、優れた研究成果を発表する経済史学者たちが輩出されている。特にG.D.スヌークスやスティーヴン・ニコラスらは、世論の福祉問題や生活水準への関心を反映した研究を発表している。

 特定の社会集団に対しての関心の高まりは、経済史の研究傾向にも影響を与えてきた。まずアボリジナルの経済史については、ジェフリー・ブレイニーが1975年の研究で1788年以前の歴史に経済学的アプローチを初めて行った。また、バトリンも独自の方法でアボリジナルの経済史を研究している。そのほか、ラルフ・シュロモウィッツは、クィーンズランドの年季奉公労働者、スティーヴン・ニコラスは、流刑囚人労働者について研究を行っている。

 このように、オーストラリア経済史は、オーストラリア社会を理解するための重要な手段であり続けている。総合的な研究としては、W.A.シンクレアの『オーストラリアにおける経済発展の過程』The Process of Economic Development in Australia(1976)やR.V.ジャクソンによる『19世紀オーストラリアの経済発展』Australian Economic Development in the nineteenth century(1977)、E.A.ベームの『オーストラリアの経済発展』Twentieth century Economic Development in Australia(1994)などがある。 

 齊藤丈晃0116