Mulga, Fred

マルガ、フレッド

　1874年頃、西オーストラリアのポート・ヘッドランドの辺りで生まれる。両親については不詳。1905年に家畜の輸送船でアデレードへと旅したのち、彼はロデオのショーを行う一団に参加し、ロデオマンかつ馬の調教師としてオーストラリア南部を興行して回った。1911年6月には、メルボルンの馬術競技場で行われた大会で素晴らしいパフォーマンスを見せるなど州杯を数度獲得するほどの名手だった。

　1920年代までに、フレッドはウィメラやカンダー湖やカナイヴァKaniva、ディンブーラDimboola、スワンヒルといったヴィクトリア西部の地域を興行して回った。さらに彼は、メルボルンで行われたメルボルン・ロイヤル・ショーにも定期的に参加した。当時活動を共にしていたビリー・キニアBilly Kinnearは、フレッドを最も優れたロデオマンのうちの一人と認めていた。フレッドは荒れ馬を見事に乗りこなし、めったに振り落されることがなかった。彼は1930年代までプロのロデオマンとして活動し、その後エキシビション専門のロデオマンとなった。最後のパフォーマンスは、1948年にスワンヒルで開催されたエキシビションの時で、10秒間にわたって荒れ馬を乗りこなした彼には万雷の拍手とコインの雨が降り注いだ。ロデオマンを引退した後は田舎で働き、家畜としての馬の調教をしていた。彼はまた、鞭使いとブーメラン投げにも熟達していた。

　ロデオマンとして成功を収めていた頃、フレッドは企業の広告塔として利用されたこともあった。フレッドを広告モデルに利用した会社に衣類販売業者のペラコ社Pelacoがあった。

　フレッドは身長178㎝で、ひげを蓄えており、柔らかい口調で話した。晩年には、足を引きずって歩いていた。彼は生涯にわたって結婚することはなく、また大の酒好きであった。1927年から1940年の間には、飲酒関連のトラブルで15回も逮捕されている。そして彼は1948年の11月2日の夜に、ディンブーラで開催されていたレガッタの大会を見に行く途中、ホーシャム駅で列車にはねられて亡くなった。彼の亡骸はカトリックの様式で、郊外の墓に埋葬された。墓石には、彼がマスターした二つの技能のシンボルである鞭とブーメランが彫り込まれている。

　齊藤丈晃0615