voting system
投票制度
オーストラリア植民地がイギリスから受け継いだ投票方式は、以下のような特徴を有していた。投票は任意であり、公開式である。有権者の中で財産資格に見合う者は複数票を投じることができる。当選結果は単純多数に達しているかどうかで決まる。これらの特徴は次第に失われていく。オーストラリアは1850年代に秘密投票を導入し、1890年以降複投票制plural votingは廃止された。20世紀前半には強制投票が実施された。
成年男子への選挙権付与は、イギリスの1918年を考慮すると、オーストラリアでは比較的早くから実施されており、19世紀の政治の特徴ともなっている。同様に女性への参政権付与もイギリスよりオーストラリアのほうが早い。このような傾向は、オーストラリア社会のもつ民主的な性格と、比較的特権階級が存在しなかったことに由来している。
単純多数制による選挙は様々な制度に変更された。1910年から1918年の間、ニューサウスウェールズではいずれも候補者が過半数を制することができない場合、上位2名の間で決戦投票が行われた。さらに一般的な方法は優先順位付連記投票制preferential votingである。これは投票者が候補者の一覧に優先順位をつけて投票し、絶対多数を獲得できなかった場合、最小得票の候補者は除外され、残りの候補者に優先順で票を再分配する方法である。最終的に1人の候補者が絶対多数を獲得するまでこれを繰り返す。この投票制は1907年西オーストラリアで導入され、ヴィクトリアで1911年、連邦で1918年、ニューサウスウェールズで1925年、南オーストラリアで1929年に実施された。クィーンズランドでは1892年から1942年まで選択的優先順位付投票が行われ、1942年から単純多数制へ戻った。1963年からは強制選択的優先順位付投票が導入された。また、オーストラリアに特徴的な強制(義務)投票の導入は、連邦では1924年、ニューサウスウェールズでは1928年、ヴィクトリアでは1926年、南オーストラリアでは1942年、タスマニアでは1928年、クィーンズランドでは1915年、西オーストラリアでは1936年であった。
もう1つの特徴は、得票率ごとに政党の議席が配分されるという比例代表制である。これは1896年から1901年にタスマニア下院選挙の一部の選挙区で実施されていたが、1907年以来、全面的に導入された。連邦上院では1948年に、南オーストラリアでは1973年に導入された。ニューサウスウェールズでは1920年から下院選挙で比例代表制が使われたが、1925年廃止された。下院議員による間接選挙の上院では、1934年から1978年まで比例代表制が実施されていた。1978年州民投票とその結果を受けた法改正により、上院は直接選挙となり、下院選挙と同時に行なわれることになった。それ以降、上院の選挙では比例代表制が実施されている。
中西雅子01