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Lucky Country
幸運な国
1960年代から1970年代初頭にかけてオーストラリアを指して広く用いられた言葉。作家でジャーナリストのドナルド・ホーンDonald Horneによって、彼の同名の本『幸運な国』The Lucky Country(1964年初版)の中で初めて用いられた。日本で日本人論がしばしば流行するように、オーストラリアでもオーストラリア(人)論が周期的に流行する。ホーンは、オーストラリア論の代表的な論客であり、『幸運な国』は、シドニー・モーニング・ヘラルドの編集者であったダグラス・プリングルの『オーストラリアのアクセント』Australian Accentとともに、代表的なオーストラリア人論となった。
ホーンは「オーストラリアは幸運な国であり、その幸運を享受する2流の人々が国を動かしている」と記し、指導者たちがもっと賢明にならなければ、この幸運は長続きしないと警告した。ホーンは、幸運な国という表現を皮肉混じりに用いたのだが、彼自身が『オーストラリアの解剖』の中で述べているところによると、高度成長期のオーストラリアの繁栄と安定に対する賛辞として多くの人が誤って理解したので、オーストラリア人の自己賛辞に変化していった。とりわけ1960年代から1970年代初頭にかけて、実際多くのオーストラリア人が繁栄、進歩、政治的安定を享受する自分たちが幸運であると考えていた。
現在でも、大部分の場合ホーンの意図とは全く異なった文脈で、幸運な国という表現はしばしば用いられている。例えば、「オーストラリアはもはや幸運な国ではない」というような表現が、最近のタンパ号事件をめぐる論争では見受けられた。
藤川隆男0604