Lord Howe Island Group
ロード・ハウ諸島
シドニー北東700キロに位置するニューサウスウェールズ州の管轄下にある群島である。1982年、28の島々からなる15.4平方キロの地域が自然遺産として世界遺産に登録される。
ロードハウ諸島は、オーストラリア東岸に約1000キロに渡って連なる海底火山の南端近くに位置し、隆起と侵食によってできた特殊な地形を呈する。島の周囲に点在するボールズ・ピラミッドBalls Pyramidと呼ばれる三角形の岩がそれを物語っている。観葉植物ケンチャヤシの産出地であり、また、海底火山と流れ込む暖流の影響で、南緯30度という高緯度にもかかわらず世界最南端のサンゴ礁が形成されている。サンゴ礁では490種に上るさまざまな魚類が生息し、島内で見られる鳥類は129種、うち10種あまりが絶滅危惧品種である。植物に関しても、生育する379種のうち219種が島原産で、74種が固有種である。特に知られているのは、世界各地の孤島で絶滅の危機に瀕しているクイナの一種で、固有種のロードハウクイナが生息していることである。
深度2000メートル以上の海底火山活動で誕生した壮観な景観という自然美、また、多くの絶滅の恐れのある種を含む動植物の野生状態における生態の保存の観点から、自然遺産の認定を受けた。
ロードハウ諸島は1788年、イギリスの巡洋艦サプライ号のヘンリー・リッジバード・ボールHenry Lidgbird Ballによって発見される。その名は後に、イギリス海軍提督リチャード・ハウ卿にちなんで名づけられた。最初の入植は1833年から1834年にかけて、キャロライン号によるものである。1878年、キャプテン・アームストロングCaptain Armstrongが最初の駐在行政官として任命され、1879年にはT.B.ウィルソンWilsonによって最初の学校が設立された。さらに1893年、バーンズ・フィルプBurns Philpがロードハウ諸島とノーフォーク諸島の定期運行汽船を開始し、島の入植が進んだ。1947年には空路も整備された。
1918年に座礁した定期運行汽船から島内にねずみの侵入が確認されたことを初め、入植の拡大とともに動植物相の乱れが生じたが、現在では島全体でその保護・回復が図られている。ロードハウクイナも、1979年には山岳部に30羽ほどしか生息が確認されなかったが、人工孵化などの実施で、その数は300羽以上に回復している。
島の中心部では観光地化が進み、現在ではシドニーから直行便が運行されている。また、現地の学校も存続しており、約50人の生徒が通っている。
高橋一徳0704