Influenza
インフルエンザ
インフルエンザ・ウイルスによって起こる急性伝染病。高熱が出て、四肢疼痛・頭痛・全身倦怠・食欲不振などを呈する。咳・鼻汁などがこれに続き、約1週間程度で軽快するのが典型的なインフルエンザの症状である。また、肺炎・中耳炎・脳炎などの合併症を起こすことがある。
インフルエンザがオーストラリアに初めて現れたのは1820年である。シドニーで流行し、多数のアボリジナルが死亡した。1825年に再発し、その後も各植民地において数年周期の流行が見られた。オーストラリア全土での流行が初めて起こったのは、1860年のことである。1890年から91年にかけて流行した「ロシアかぜ」は、数千人の罹病者を出したものの死亡率が低く、また死亡した患者は主に体力のない乳幼児や老人であった。対照的に、1918年から19年に世界中で流行した「スペインかぜ」では、体力のある壮年期の患者も高い死亡率を示した。オーストラリア全土の死亡者は12,000人余りに及び、全世界の死亡者も2,500万人から4,000万人に達した。スペインかぜの被害は、オーストラリアに経済的、社会的混乱をもたらした。他の呼吸器系の病気と同様、このスペインかぜの流行はアボリジナルの社会に甚大な被害を与えた。
1919年1月22日にスペインかぜはメルボルンで発生し、続いてシドニーに広がった。死者の半数がニューサウスウェールズで発生し、州間の移動には大幅な制限が加えられた。インフルエンザや他の伝染病予防のために、オーストラリアでは厳しい検疫システムや食物の加工、配給に対する管理体制が確立された。また都市における厳格な建築基準の設定や住宅供給の改善、及び下水道の完成は、病原菌の運び手である害獣の駆除に効果的であった。ワクチンの開発や政府による予防注射の実施とも相まって、1950年代以降、これらの公衆衛生の働きによりほとんどの伝染病が根絶された。
しかし、インフルエンザは今日でも未だに再発している伝染病である。新たなウイルスが周期的に出現し、その拡大を防ぐ為のワクチンの開発が追いつかないことが、流行の頻発する原因である。最近の流行では1957年の「アジアかぜ」、1968年の「香港かぜ」が挙げられる。アジアかぜ流行に際して、スペインかぜと同様の被害が懸念されたが、スペインかぜ程の被害はなかった。また鳥インフルエンザへの人間の感染、及び死亡も今日的な問題として懸念されている。
太中麻美0904