Harvester Judgment
ハーヴェスタ判決
いわゆる「基本給」basic wageの概念を導入したものとして有名な判決。
1907年、ヴィクトリアの製造業者マカイHugh Victor McKayが、彼の会社が製造した農機具への1906年物品関税法の適用除外を求める請求を行い、連邦調停仲裁裁判所の長官ヒギンズに判断がゆだねられた。同法は、調停裁判所が「公平かつ妥当な」賃金を支払っていると認めない限り、製造業者は物品税の形で関税を支払わねばならない旨定めていた。したがって問題は、「公平かつ妥当な」賃金がいくらであるかにあった。賃金が公平妥当であるかの判断基準として、ヒギンズは企業の収益性を拒否し、代わりに労働者の生活保護の観点を重視した。ヒギンズは非熟練労働者の家計調査を行い、夫婦と3人の子供で構成される家庭が「文明的な生活を送る」ための最低賃金を日給7シリング(週給42シリング)と試算した。マカイは労働者に日給6シリングしか払っておらず、ヒギンズは「公平かつ妥当な」賃金が払われていないとして請求を却下した。ただし、当時の主要な製造業者によって非熟練労働者に支払われていた日給は、約6シリング6ペンスであった。ヒギンズが7シリングに定めた理由として、同額が労働運動の目標であったことと、対等な力関係にある労使間の団体交渉により決定されるであろう金額であったと、ヒギンズが考えていた点を指摘する研究者も多い。ハーヴェスタ判決は必ずしも労働組合の熱狂的支持を受けたわけではなく、最高裁からも違憲判決を受けているが、彼の示した原則は最低「生活給」living wageへの強力な論拠として受け容れられていった。
ちなみに同判決の名前は、マカイの会社が製造していた農機具「サンシャイン・ハーヴェスタ」に由来する。
藤井秀明00