Browne, Thomas Alexander

ブラウン、トマス・アレクサンダー

　1826年8月6日、ロンドンで船長の長男として生まれた。1831年、以前東インド会社に勤めていた船長の父は、妻とトマスを含む3人の子供を連れイギリスからオーストラリアに渡った。ブラウン船長は捕鯨と貿易で成功し、シドニーにエンモーEnmoreと呼ばれる邸宅を建て、これが郊外地名の1つとなった。トマスは私塾のW.T.ケイプCapeの学校で学び、さらにシドニー・カレッジに通った。さらに、メルボルンで、デイビッド・ボイド牧師に教えを受けた。ブラウンは1844年から1869年の間スクオッターとして、初めにポートランドに住み、次にスワンヒル近郊、そして最終的にはナランデラ近郊に住んだ。しかし、1869年には干害のため牧畜業をあきらめざるをえなくなり、1860年代に事業に失望し、1872年に政府の役人となった。ニューサウスウェールズでは、当時最大規模の金鉱であったガルゴングで、1871年に治安判事、1872年に金鉱監督官、1881年からダボウ、1884年からアーマデイル、1885年から1895年までオールバリーで様々な役職を務めることとなった。1895年に退職した後はメルボルンに住んだ。

　1878年にブラウンは、最初の書物Ups And Downを出版したが、これは1875年に連載されたThe Squatter's Dreamをまとめたものであった。ロルフ・ボウルダウッドRolf Boldrewoodのペンネームを用いたのは、この時が最初であった。多くの作品の中でも最もよく知られているのは、Robbery Under Armsで、1882年から1883年の間、『シドニー・メイル』に連載された。一般に言われているように、その多くの部分は彼の体験に基づいていた。その後1889年に改訂版が出版され、国内同様国際的に認知されることとなる。少なくとも演劇が1つと数本の映画と多くのラジオ番組がこの小説を題材に作られた。ペンネームのロルフ・ボウルダウッドというのは好きな作家であるウォルター・スコットの小説から取られたものであり、その作風も同様にロマン主義的であった。Robbery Under Armsはオーストラリアを舞台とし、オーストラリア人を主人公とした小説で、現在オーストラリアの古典の1つであるとみなされている。

　西川俊紀0501