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Black Line
ブラック・ライン
1830年、アーサー副総督は、ヴァンディーメンズランド(タスマニア)に住むアボリジナル一掃計画(Black Warと呼ばれた)を実行するため、3万ポンドの巨費を投じ、約2,000人の白人兵と一般市民からなる部隊を組織した。実際のアボリジナルの数は100人程度であったのに対し、アーサーはこれを2,000人程度と見積もっており、その入植への抵抗を過大評価していた。アーサーの作戦によれば、後にブラック・ラインと呼ばれる白人の人間の鎖を、タスマニア東部(定住地)の北から南へと南下させることにより、タスマニア東部に残るすべてのアボリジナルを、タスマン半島に追い込み捕獲できるはずであった。この作戦は約7週間続けられたが、捕らえられたアボリジナルは、倒木の陰で午睡を楽しんでいた母子、たったの2人だった。また他に2人のアボリジナルが射殺された。この作戦は、当時の人々は大失敗だと批判したが、実は完全な成功を収めていたのである。アボリジナルを捕獲できなかったのは、当時の入植者の予想に反して、実際には東部入植地にアボリジナルがほとんど存在しなくなっていたからであった。
安井倫子00