オーストラリア辞典
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Antarctic Treaty

南極条約



 南極大陸における領土権の凍結、科学的調査の自由、平和的利用と非軍事化等を定めた条約で、1959年にオーストラリア、米国、ソ連(当時)、チリ、英国等の各国がワシントンで調印、1961年に発効した。19世紀後半から欧米の南極探検が本格化するなかで、オーストラリア人も各国の探検隊に参加した。1911年から14年にかけて、ダグラス・モーソンDouglas Mowsonがオーストラリア独自の隊を率いて南極を踏査、3ヵ所の基地を設けた。こうした活動を通じて、オーストラリアは南極の一部領有を志向するようになり、1936年には、英国政府が南極のほぼ半分に当たる部分におけるオーストラリアの主権を宣言した。しかし、1961年の南極条約の発効により、オーストラリアは他の条約締結国とともに南極における領有権を留保した。その後、南極における基地活動や観光利用等の増加による環境への影響が懸念されるようになった。そこで、1991年、オーストラリアを含む南極地域で継続的に観測活動を行っている26ヵ国(以下、「南極条約協議国」という。)の間で、南極地域の環境の包括的な保護を図るための「環境保護に関する南極条約議定書」が採択され、1998年に発効した。現在、南極条約協議国の中には、南極条約の調印前から南極の一部に領土権を主張している7ヵ国(オーストラリア、英国、ノルウェー、フランス、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン)と、領土権を主張しないと同時に他国の主張も否認する国(米国、ロシア、日本、ベルギー、南アフリカ等)があり対立している。しかし、南極条約においては双方の立場が認められ、基本的立場の違いはあるものの、対立を表面化させずに環境問題等の共通関心事項について対処する体制が維持されている。

 浅野敬一00