オーストラリア辞典
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Aboriginal musical instruments

先住民の楽器



 アボリジニの音楽には、主に肉声の伝統があり、音声が含まれない音楽的な儀式はほとんどない。楽器の最も重要な機能は、歌の伴奏をすることであるが、例外もある。トレス海峡諸島Torres Strait Islandsの島民は、かつていくつかの楽器を単独で演奏したが、このような音楽的伝統は、本土のアボリジナル・オーストラリアよりもパプア・ニューギニアから来ている。その他の歌の伴奏をしない楽器の機能はもっぱら儀式用である。

 アボリジニの楽器は、イディオフォーン、膜鳴楽器、気鳴楽器の3分類に属している。最も多く見かけるのがイディオフォーンで、楽器自身の本体がふるえることによって音がつくられる楽器である。拍子木clapsticksは、大陸の広い地域で用いられてきた。たとえば、1本のスティックで地面や木などを叩いたり、2つのスティックをそれぞれ片手に持ってお互いを叩いたりして音を鳴らした。特に北部では、このスティックにブーメランが使われている。拍子木はいくつかの幅広い、リズミカルなパターンで演奏される。まれに出てくるトレモロ効果では、かなりの手の器用さが要求される。他にはラスプraspがあり、主に西オーストラリアで演奏されている。これは切れ込みの入ったスティックを、もう1つのスティックと共にリズミカルにこするもので、演奏している姿はヴァイオリニストに似ている。ラトルrattleという、種のさやをがらがらいわす音器もある。これはヨーク岬半島やトレス海峡のダンサーが使っており、それぞれの手に1つずつ持って演奏する。

 膜鳴楽器、これは伸縮性のある皮膜の振動によって音を出す楽器であるが、ヨーク岬半島とトレス海峡諸島だけで使われた。それは、この地域がパプア・ニューギニアの影響を強く受けているからである。トレス海峡の太鼓(ドラム)は、パプア・タイプのものであり、長い胴を持ち、単一の木からつくられていて、蛇の皮が張られている。他にもワラビーや大トカゲの皮も使われる。ドラムは水平に固定され、手で、連続した規則的な拍子や連打音を打つ。

 気鳴楽器の代表的な例は、ディジェリドゥdidjeriduであるが、その名前はアボリジナルのものではなく、1926年に探検家のハーバート・バセドウHerbert Basedow が名づけたと言われている。木製や竹製で、たいてい1メートルから1.6メートルの長さがある。ホルンとトランペットの中間の楽器であり、主にノーザンテリトリーのアーネムランドや西オーストラリアの北西部にあるキンバリー地区で演奏されてきた。その後、オーストラリア中央部やヨーク岬半島南部へと拡大した。竹製のディジェリドゥは一定の長さの竹の断面の皮を焼いて、中を空洞にすることによってつくられている。一方、木製のタイプのものは、シロアリによって最初から空洞になった木の幹を使い、それに制作者が磨きをかけることによってつくられる。音は低く、吹き込む息の圧力や、口の締め具合によって、様々な音色を出すことができる。日本にも多くの奏者がおり、世界的にもこの楽器の人気は高く、最もよく知られたアボリジナルの楽器である。気鳴楽器には他に、ヨーク岬半島で用いられている竹製のホイッスルや、トレス海峡から伝わった竹製のフルートとパイプもある。

 田中沙依0704